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さかい目マタギ

サラリーマンと自営業、アメリカと日本、難聴と健聴 といった境目をまたぐことについて思ったことを書くブログ

パクスアメリカーナの崩壊、その後にくる信頼の帝国、宗教の復権について

学生時代アメリカの大学で学んでいて、多少ともアメリカの情報通でいた気がしていたので、予想に反してトランプが選挙に勝ったことに衝撃を受けたので今更ながら考えたことをメモ。

 

個人的にはこれはソ連崩壊以来の事件だと思っています。

アメリカはこれまで普遍的な人間像(基本的な人権や自由は人種や社会的背景に関わらず生まれながらに持っている、不可侵な権利である、といったたぐいのこと)の精神的支柱だったわけですが、今回の選挙でそういったイデオロギーの国ではなく、ローカルな人のための単なる国民国家であると宣言しました。

別の言い方をすれば、才能や努力、学力、学歴といったものが序列をつくってきた社会秩序(アメリカ帝国主義)に対してアメリカ国民はNoを突き付けたわけです。

このアメリカ帝国主義の秩序では、男女や人種といった違いは問題とされないですし、これは万国のひとがつながりうる考え方なので、アメリカを帝国足らしめていた重要な要素でした。またそれが故、異なる人間観を持つ政体(共産主義や独裁)に対して(表向きには)敵対的な態度をとってきました。

しかし、今回の選挙結果はその価値観を傷つけるもの=アメリカ帝国主義の秩序の弱体化なので、恐らく中国やロシアは今までより活発に対外的な活動を行うことは想像にかたくありません。アメリカは歴史的に海外に積極的に絡む時代とうちに引きこもる時代(モンロー主義)をスイングしていますが、引きこもったあとには世界大戦が起こっていまして、非常に不吉な予感がします。

世界大戦まではいかなくとも、複数の地域大国が群雄割拠する世界になることはおそらく不可避でしょう。

 

しかし、ここまでインターネットによってつながった世界です。アメリカ帝国主義を代替する世界的イデオロギーがいずれは現れるとも同時に思います。

次世代のの帝国は国ではないかもしれません。一番イメージしやすいのは信頼の帝国かなと思っています。

facebookgoogleなどが近い存在だと思うのです。

 

facebook等における発信やネットにおける評判は重要な信頼資産になっています。個人が信頼できるか否かの判定がネットだけでできてしまいます。

これがワークするのは、悪い評判がたつと永遠にそれがネットワークに記憶されてしまうという強制力が働くからです。

極端にいえば、この信頼資産さえあれば世界のどこでも生活ができるし、なければどこでも不遇をかこうことになります。

個人の生殺与奪の力を持つこの次世代のパワーは国家をしのぐ存在になるのではないかと予感します。

 

さて、アメリカの選挙では今回facebookにおけるガセネタというのが大きな問題になっています。

こちらに分析がありますが、なんとfacebook上でより人を動かしていたのは主要メディアではなくガセネタのほうでした。

これが何を意味するかはいろいろ解釈がありますが、情報過多を遠因として情報のキュレーションが進んだ結果、相対的に異なるグループとコミュニケーションをとるコストが高くなっているのではないかという気がしています。

私は地球温暖化は進んでいて、イスラム教徒=テロリストではないという側の世界に住んでいる人間なのですが、トランプ支持派の中には温暖化は嘘八百でイスラム教徒は全員テロリストであると信じている人が明らかに混ざっています。

いやいやと、データを引っ張り出してきて地球の気温が上がっていることや、イスラム教徒の中のテロリストの割合は低いといって説得しても効果がなかったのが今回の選挙です。

反対に、いやいやと、そのデータだってエリートが都合よく改竄しているのではないかという反論がくるわけです。

これにさらに反論しようとすると、どんどん自分自身が直接的な観察者としての立場に近づく必要があるのですが、生活もある以上そこまで時間はさけません。

かくして、説得する努力は頓挫します。

科学だったり人間に対するとらえ方など、根本的な世界観の相違を超えるコストは大きいのです。

 

例えば、アメリカ人の同世代(2016年現在30歳前後)はいわゆるリベラルなひとが多くて、私のfacebookのタイムラインにはトランプ反対(ヒラリー賛成でもないところはまた興味深いのですがそれは一旦おいておきます)の投稿しか流れてきませんでした。

自分のタイムラインを見ると完全にヒラリーの圧勝のはずだったのですが、そうではありませんでした。またそうではないかもしれないと思わされる機会もありませんでした。

 

明らかに私の人脈が偏っていたということなんでしょうが、両陣営において多かれ少なかれ似た状況があったのではないでしょうか。

世界観が近い人と意見を共有したり、価値観を確かめあうほうが、違う世界観のひとと議論するよりも楽しいでしょうから。

前提をすり合わせない異なる考え方のコミュニティはそれぞれにおいて宗教化します。コミュニティの真ん中にある考えはチャレンジされないからです。そのような世界にあって大事なのは真実ではなくコンセンサスです。

 

今回のアメリカ大統領選挙では、それぞれの陣営がガセネタをまき散らす舞台となった、次世代の帝国であるfacebook等の信頼のプラットフォーマーですが、今後どういった要件を持って世の中の秩序をつくっていくのか、今後非常にみものです。